急がば回りこんでドロップキック

後藤あいといいます。

綺麗にならせてくれませんか

実家にいる時よりも3時間遅く寝たので、3時間遅く目覚ましをかけた。2時間早く起きた。

遅く起きた罪悪感がない。朝ごはんもない。昼ごはんもないし、干さなきゃいけない洗濯物もなかった。シャワーの水圧が強く、お湯が頭の上をかすめてゆく。洗面台の下にあったのをガメてきた小さい石鹸は足の臭いがした。まじで。ほんと。たぶん今も。

お昼はこもって仕事と決めていたので、する。持ってきた食べかけのコーンフロストをボロボロこぼしながら手で食らって、これは浜松の生活とあまり変わらない。

時間が浜松のそれと同じように過ぎていく。甲州街道と首都高が近くにあるはずだけど窓からは見えず、車の気配も霧ヶ峰の単なるモーター音に消されてしまっている。俯瞰で見たら、きっとぎゅうぎゅうに人が詰まっているのに、分からない。静かで不気味。不動産サイトの口コミでは閑静とあった。ここから全体を捉えようとするのは無茶だったけど、コントラストでかえって際立っているっぽい。トトロのススワタリみたいだと思った。高評価なんだか低評価なんだかよく分からんよ。

夜に友人とご飯を食べる約束をしていたので、シャワーを浴びる(今日2回目)。あがって乾かし中の髪を見ていたら、どいつもこいつもバカにしやがってという気分に至った。昨日の美容師も、エクセルシオールで会った同期も、愛想よく接して裏では笑うんだ。メイクするのが嫌になるが、降りたらまじで終わる。化粧ノリはここんとこ毎日悪かった。

出かける直前、リュックの下にポテロングを見つけてお腹いっぱい!お白湯も飲んで大満足。私はまだ旅行気分にあるのだと思った。三食食べても食べなくても、ポテロングを貪り食っても食わなくても、化粧ノリは悪いままなんだよね。

代田橋の沖縄タウンでシークワーサーサワーを飲む。
ジーマミー豆腐を食べる。
生スクの唐揚げを食べる。
ドゥル天を食べる。
スーチカーを食べる。
紅芋梅酒を飲む。
ソーキそばを食べる。

帰り、反対のホームにいた友人が電車を待つ私を写真に撮って送ってきた。そこの私は鏡で見る私より太っていて、綺麗じゃなかった。

なんか、私、間違っている気がする。大切なのはそこじゃないかも。バカにしているのは私のほうかも。

後、台風5号のいやらしい風が気持ち悪くて、食べ過ぎを反省しました。

東京、逃避行、初日

新幹線を品川で降りて、ウィークリーマンションへ向かう。歩きすぎて、踵は既に割れていた(体感)。

タオルと洗剤とハンガーはマンション最寄の100円ショップで買ったけど、やはり30Lのバックパックは送ればよかったなあ。

着いて買ったばかりのタオルを洗っている間、パフっとベッドに飛び込めば割れた踵のことなど忘れて、(あー!平和だ!)と浸る。実家のどこよりも、平和で落ち着いた場所かもしれん。仮住まいだけど。仮住まいなのに。

空間に自分が馴染みはじめてウトウトするも、服を手に入れねば着るもんないぞと思い出して、予約してた美容院の2時間前に出かける。そういえば浜松に来て4ヶ月、服は1着も買っていない。新宿ビックロでカーキ色のフランネルなシャツワンピースを見つけて買う。今の季節でも着ていいって、通りかかった店員さんが言ってたから(聞いた)。それだけ買うのにの8分並んだので、愛着倍増。早く着たい気持ち!

8分並んだのに美容院の時間にはちょっと空くので、そばのエクセルシオールへ寄った。コーヒーが好き、タバコを吸いたい(好きではない)、座りたい、そんなところで大学のゼミで一緒だった同期に偶然出会う。名前呼ばれて嬉しかったなあ、ゼミにはほぼ行っていないのに。覚えててくれたんだなあ。「ゼミのグループLINEに報告したよ〜」って、私それに入ってないんだなあ。そりゃそうだよなあ。

やっぱりなんとなく居づらくなって、出る。忙しい女感が醸せてスマートだと思った。背筋を伸ばして「会えて嬉しかった〜」と本音を言ってから時計を見たら、まだ美容院の時間には少しあった。くぅー、スマートじゃない!

ビックロと美容院の間をフラフラしながら時間が来るのを待つことにした。仕事で履けるヒール靴が欲しいとABCマートに入るも、私の存在自体がまるで無視されて非スマートに拍車がかかる。でもまあ、髪を直せば!なんとかなるでしょう!

前を歩く子がナンパに苛立っている時、後ろで私はいつのまにか曲がっていた背筋を伸ばして胸を張る。後ろにもいるよ!って風。まだまだ!美容院!美容院!

カラーと縮毛矯正で髪をいじめ抜くメニュー。髪を変えるだけでちょっと可愛くなれたけど、1000円カットのおばちゃんが切ってくれた前髪を「自分で切ったね?ガタガタだったから直したよ」って言われてムカついた。

そしてから、帰りがけに寄ったカフェのトイレで「毛先のクセは活かしましょうよ!」という自意識高い系美容師の提案を受け入れた私のボサボサ髪を見る。ただただ、びっくりした。それだけ。いや、ちょっと落ち込んだ。

カフェはこれまでに来たことがあったところだったけど、全面喫煙から全面禁煙に変わっていて、おお、東京オリンピック…と、いずれ来る自らの卒煙に想いを馳せる。想いを馳せるだけというのが、いささか意思弱女風。

カフェでは仕事して(いい仕事ができた!褒)、家族のこと、ぐねーっと考えて、すっかり夜半で急いで帰った(踵が粉砕されているのでたぶん低速)。

早速刺激が多くて、明日は何があるだろう。

東京で何を得て帰るだろう。

ワクワクしてて、少し怖い。

初日はそんな感じだった。

20170806

実家で暮らすのが嫌になった。

だから、ちょっと、10日間くらい、東京の、私の稼ぎではきっと住めない場所にウィークリーマンションを借りて、暮らすことにした。

逃避行といえば夏らしくって粋なのだけど、逃げるだけです。

見ないふりできなくなった自意識
かといってはっきりしない
縛られている感じがして
監視されてる感じがして
我慢ならなくなって振り返ると目線を逸らされて
私以外のせいにすれば楽でした
善意がイヤらしい
9年の一人暮らしで蓄えたわがままですか
私は一体何に苦しんでいるのですか

家族というものが分からなくなったと母親に言ったら、最近眠れないのも食べられないのも私たちのせいなのかと思っていたんだと泣きながら、一人になって考えてみなよと返された。この時母親は、考えすぎる私の欠点を、まるっと受け止めた。明け方二人で泣いて、遠くで父親がテレビの電源を入れた音が聞こえたんだ。ああ、父ちゃんってこんな早く起きるんだなって。

逃げる先が東京というのも、いささか語彙なし女風。

今は、青ネギを切った包丁を上向きに持ち替えることをしなかった自分が、ただ新幹線に乗っているだけだ。

父はAVを見てた。

父の寝室(リビング)からパシャパシャスマホで写真撮る音が聞こえてきて、たまに連写とかしてて、鳴り止んだと思ったらまたパシャパシャし出して。

なにをそんな撮ることあるねんと偽関西弁でつぶやき&好奇心沸々……。

歯ぎしり対策のマウスピースを洗うついでに、ちょろりと部屋を覗いてみる。ふすまは全開だ!

父はAVを見てた。

おいおい父…デジタルとアナログの狭間で不器用に生きてる父…どんな顔して撮ってんねんと再び偽関西弁…どういう感情で後から見んねんと再び…

私には彼の血が半分流れています。

悲しいぜ?