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急がば回りこんでドロップキック

後藤あいといいます。

染髪と小さい虫

水曜に久しぶりに外に出て疲れたのか、なぜか2日間眠ってしまった。

それからなんだか、誰に、何に対するでもなくイライラして、髪を染めようと思い立った。おそらく自信喪失とか、不安とか、恐怖とかそんなところだろう。髪を染めて違う自分になろうと言うわけだ。自分の思考回路は至極単純にできていて我ながら痛快。

グレーにしたかったのでネットで調べた。黒髪をグレーにしたいなら白混ぜりゃええんちゃうの!とはいかないらしく、繰り返し、しかも美容室でしてもらわないと綺麗なグレーには染まらないんだと。

連日のピーナッツチョコ暴食で肌も髪もボロボロの無職は、美容室に行く度胸もなければ、彼らに払うお金もなかった。

朝を待って近所のドラッグストアへ行った。カラーリング剤とヘアトリートメントを持ってレジに行くと、店員の可愛い茶色髪の女の子が私を見て笑いをこらえながらレジを打っているような気した。生理用品入れるのと同じ紙袋に私のカラーリング剤も入れてもらうとしたけど、辞めた。髪を染めれば、そんなことどうだって良くなるんだから。

家に帰る道で大学生のような女の子の集団が前を歩く。近くに大学があるけど今日は日曜だからサークル活動か何かだろう。髪を見るとみんな同じ色で染めて、みんな毛先がパサパサだった。嫌な予感がしたので、カラーリング剤を胸に抱えて走って彼女たちを追い越した。

久しぶりに走って肺が破裂するかと思ったけど、肺を気遣っている場合ではない。早く!髪を!染めないと!

泡で出てきたカラーリング剤は、特有の異様な匂いを放って、鼻を突き刺した。ふと、真っ当に美容室に通えていた頃を思い出す。その頃は田舎にある総合病院の個室で入院していたおじいちゃんみたいな匂いだと美容室で一人にやにやしてたっけ。それを思い出すだけで心が引き締まって軽くなった。

泡を頭にまとってテレビを見ていると蝿にしては大きい、蝉にしては小さい黒い虫が部屋を飛んでいるのに気づいた。殺したところで処理に困るので、部屋から出そうとカーテンを開けて窓を全開にする。そうした後、自分が全裸に泡頭だったことに気づき、すぐにカーテンを閉めた。虫はいなくなったが、慌てたせいでカーテンと壁紙に泡がついて、拭いても色が残った。これだから虫は嫌い。最悪。

放置時間が過ぎて、貧乏の性でもう10分待った。それから髪を洗って、トリートメントして、流すが、何度鏡を見ても髪色は変わっていなかった。私の性格は頑固だと分かっていたはいたが、髪も頑固なんだなと失笑しながらドライヤーで髪を乾かすと、髪の色がどんどん明るくなった。そうか!濡れてる時は暗い色になるのか!

風量をターボに変えて大急ぎで乾かす。合コンでどうせみんな遅刻するし、わざと少し遅れようと喫茶店で時間を潰している時と似た気分がした。

私はもう女子と呼べる年齢でない。

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