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急がば回りこんでドロップキック

後藤あいといいます。

4年ぶりにSEXをした。

4年ぶりにSEXをした。

Tinderでマッチした韓国人。韓国人らしい穏やかな顔立ちと、30代独身らしいおしゃれに周到した服とか髪とかチャリとか。彼の持ち物全てが彼に愛されてるような気がした。今となってはクソ食ってみんかい!と思うが、それを目の当たりにした時、私は彼の持ち物になりたいと思った。

彼はいつも同じ服を着るという、どこかの実業家みたいなポリシーを持っているらしく、休日だった今日にまとめて洗濯したであろう大量の黒いTシャツと黒いパンツが、定期的に劇落ちくんで磨き掃除をしているのかと思わせるほどに輝いた室内干しスタンドに綺麗に並んでいた。それを恥ずかしいと言いながらも丁寧に片付けている彼を見て、けん制。結構な時間をかけて服の片付けを終えると、埃のない綺麗な床をコロコロで掃除し始めたから、やっぱりこいつは潔癖症だというところで落ち着いた。私は潔癖ではなく、むしろガサツで、どうにか彼をイライラさせないように、部屋に入るなりすぐ用意された部屋着に着替えて、ベッドの隅に浅く腰掛ける。

私の着替えが終わってもまだ彼はコロコロしていた。私は行きがけに買ったお酒がぬるくなりはしないかと考えながら、彼の許可を得て、彼の仕事ぶりを特集した雑誌を読みながら、会話の糸口と彼のスペックについて探った。大人の恋愛感がふんわり漂うムズガユイ空間だった。

Tinderにありがちな、どんな仕事をしてて自宅の最寄駅はどこでみたいな話はメッセージの段階で全くしていなかった。ビールを買って帰ろうか迷ってるという相談にYou should buy!とかLet's buy!とかNow's Friday nignt, right?とか高田純次に一目置いてもらえるかもしれない適当さをもって会話していた。ということで、私は彼のことについては何一つ知らなかった。それでも家まで来てしまったのは、聖子ちゃんっぽくビビビときていたのか、Tinderに載せていた写メが好みにぴったり合ったのか、それとも私の性欲が爆発寸前だったのか、これは今でも分からない。

彼の家は港区の割とチャラい場所にあった。6畳くらいのワンルーム。潔癖ならでは、狭いけど意味のないものがひとつもない整然とした部屋だった。仕事柄もあるんだろうけど趣味だというおしゃれな家具や食器。洗面台の上にはスティックディフューザーと化粧水、オールインワンのジェル、もうすぐなくなりそうだったが、オーガニックを主張したヘアオイルもあった。

ちなみにトイレにはスリッパがあったが、これ履いて出てきちゃうよね。慣れてないとね。玄関でスリッパ出されたけど、その時もスルーしてしまい彼に履くように促されたしね。スリッパっている?家で。いるの?なんで?

しかしどれにつけても、これはモテる。彼はきっといろんな女とここでSEXをしている。

でも、このおしゃれな彼と彼の持ち物は、モテるために、いろんな女とヤるために用意されているそれではない。そこに私を含めた女たちがクラッときてしまうんだ。哲学的な背馳を彼と彼の周りの彼女たちに見た。

ようやく本来の目的であったお酒を一緒に飲む時間が始まった。既に潔癖の烙印を押していたので、スミノフの瓶からグラスに注いで、それから口へ注ぐというピタゴラスイッチかよ!みたいな飲み方はすんなり受け入れることができた。日本の映画が見たいと言って、明治時代の夏目漱石の弟子と現代の女子高生が携帯で世間話をするという日本らしい映画を見た。見るんだか流してるんだか分からない感じで見た。高校生のころ、you are watchingでなく、lookingでなく、seeingだと、授業中ALTの先生にタメになる小言を言われたことがあったが今回もseeingだった。

彼が会う前にLINEでextra matと呼んでいたベッドは厚めのマットレスに足が生えたニトリで売っていそうなシングルベッドだった。それに2人で座って彼に肩を抱かれながら、今よりかなり若い頃の夏帆タイムリープに気づいてはしゃぐ姿を眺めていた。

出会い系で知り合って2日で対面し、出会って5分で家に行き、映画が終わるころにSEXを終えた。そして寝て、起きて、帰った。

最中、彼は韓国語を交えながら喘いで、私は00年代のアダルトビデオみたいだなあとニヤニヤしていた。そういえばあの頃のAVが1番いいよ。男優さんにはたくさん喋ってほしい。よろしくお願いします。

彼がイキそうだと日本語で言った後、これまた分かりやすい日本語で「またHしよう。来週でも」と言った。危機迫った状況でずいぶん具体的な提案ですこと!と思ったけどやはりそれは場違いな文章で、体位を変えようとして私から抜いた瞬間にイッた。イキそうだと言っているのに悠長に体位を変えようとしていたの、日本人の私には理解できないよ。

ここまで書いて3日が経ったが、今も痛い陰部と騎乗位で使った腹筋の筋肉痛を、女を上げてくれた証として心地よく感じている。起きるたびに、トイレに行くたびに痛みが引いていくのが分かって悲しいほどだ。また戻っちゃう。

キスはしなかった。好きでない人とSEXはできるけどキスはできないっと誰かが言っていたのを、ソースが何なのか分からないのに信じている。だから私は!きっと!たぶん、また彼に誘われるし(来週でも)、もしかしたら恋人になって、たくさんキスしながらコンドームなしでSEXするかもしれない。おしゃれな彼と4年ぶりの私。名実ともにマッチする日は来るか。