急がば回りこんでドロップキック

後藤あいといいます。

私はタバコを吸う。

私はタバコを吸う。

ブルーライトカットしたのかしらと思うくらい黄色くなった壁に囲まれた、硬い硬いユニットバスのへりに腰かけて、辞めなきゃ辞めなきゃと思いながら吸うのだから、世話ない。まじで。

私を綺麗にしてくれるはずであった石鹸も、嫌なものを洗い流すためにそこに置かれたはずであった便器も、今は水分を失い黄色みがかった茶色をしている。タバコなど吸っていられないような吐気がした時、私はトイレにも、お風呂にも入ることができないのだ。そこに置いておいた歯ブラシは、徐々に褐色を帯びていくのが目に入るのが嫌で、この前毛が黒いやつに変えた。

喫煙所を探し回って駅の端まで歩くのがしょうがない。本屋にいる時、特にOLさんが好きそうなコスメとかファッション系とかのコーナーに立った時、オーラのようにまとっているタバコの匂いが、しょうがない。全面禁煙の洒落たダイナーに連れてきてもらった時、会話をこっそり抜け出して外の喫煙コーナーで一服して、バカらしいなと思いながら孤高を味わっている自分が、しょうがない。

タバコはカッコイイ。そのウソは多くの人が暴き、とっくに廃れている。それを頑なに信じている人間など、実は、もう、ハチ公前の喫煙所にも、片田舎の工事現場にも、映画の中でさえ、一人としていないんですよ。喫煙者は、一人ももれなく、自分が喫煙者であることを恥じて、惨めな思いを抱きながら、辞めた後に待っている人生を頭の端に置きながら、行き場のないセロファンとアルミ紙をポケット、もしくはカバンの底に突っ込んで、今日もタバコに火をつけるんですよ。ちょっとばかし息が苦しくても、口の中がドブみたいにネチョネチョして臭くても、百害あって一利なしと言われても、禁煙宣言を受理してくれた友人を裏切ってでも。いっそのこと、病気にでもなってくれれば?1000円に値上げすれば?いつ辞めるの、イマデショ?

まあその半分以上が無意識なんだろうけど、ストレスからの解放とか、コミュニケーションの手段とかにタバコを使うこともある。タバコを吸わない人は、ストレスを解消したりコミュニケーションを取ったりするのにタバコを使う必要がない。どうやって休憩すればいいんだっけ?どうやったらタバコなしで酒の席が楽しめるんだっけ?タバコは思考をもダメにしてしまう。もってるのにもってない。ストレスから解放されるはずなのにストレス。なぞなぞかよ!

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