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急がば回りこんでドロップキック

後藤あいといいます。

あるOLの夜・平日編

フィクション

18:40
こういう時に限って、乗った電車が小田急線直通。これ朝乗った電車と同じじゃない?って思うほどに、代わり映えのしない中吊り広告を眺めてから、表参道で途中下車して、予約していたまつげエクステに行く。途中、大学生の大群とすれ違った。彼らは、青学に籍を置いていることそれ自体への誇りのような、すがりつきのようなものをプンプン放出させている。とれかけのまつげエクステを以って異色を放っている自分に少し優越感さえ感じる。こう思わないと青山通りなんて歩いていられないのかもしれん。朱に交わればなんとやらという諺に糸口を見出そうともしているが、それは予約した時の自分に聞いてくれって感じだ。

18:57
大学生を縫うように早足で歩いた先に、サロンがあった。美容院とまつげエクステは、ホットペッパー予約の初回特典を片端から受けていて、そろそろ決まったサロンに通いたいと思っているが、たぶんもうここへは来ない。疲れた。4階にあるサロンへエレベーターで登っている最中、これから靴を脱がなければいけないことに気づく。やばい。今日は臭いほうの靴を履いてきてしまった。エレベーターの中で靴を脱いで1日分の蒸気を逃がそうと努力する。プールに入る前みたいにストッキングで覆われた足をブンブンさせると、エレベーターの中が私の足の匂いでいっぱいになった。直通でよかった。4階でドアが開くギリギリでもう一度靴を履いた。すぐ脱ぐのに。エレベーターの中でその匂いを浴びたから、鼻が馬鹿になったんだろう。実際入り口で靴を脱いだ時には、そんなに臭く感じなかった。

20:42
帰宅。靴を脱ぐと足が臭かった。足洗おうかな、と思って辞めた。5時間はまつげを濡らさないようにしてくださいね、と言われたので、それに従って顔も洗わなかった。5時間っていうと1時だろ、寝る時間だよ。

23:00
録画しておいた科捜研の女の再放送を見ていると、いよいよドロドロになったメイクが気持ち悪くなってきた。目を避けてメイクを落としたが、気休め程度なんだろう。ボサボサになったまつげを鏡で見て、顔を作ってみる。遠くから聞こえる内藤剛志が犯人探しに奔走している声が、ザ・平日の夜って感じだ。洗顔でつっぱった顔に1本5,000円の美容液と1本498円の化粧水を混ぜた液体。塗るというよりは流しこむ感覚がある。クリームで蓋をしてベトベトになった肌に前髪がはりついて、休日恒例の、3日間風呂に入っていない時の、あのギトギトの髪を思わせる。大丈夫、明日、出かける前にシャワー浴びるから。

1:00
iPhoneもおやすみモードにした。目覚ましもかけた。電気も消した。明日で会社辞めようっと。